東京地裁平成27年10月8日・企業買収における役員の善管注意義務違反が判断された事案

●東京地裁平成27年10月8日判決
控訴

●判時2295号124頁

●企業買収における役員の善管注意義務違反が争点となり,経営判断原則を適用した上で,請求を棄却した事案。

①創業間もないベンチャー企業に対する投資の事案
・投資判断は,一般的な株式投資と比較して,不確実な将来の経営状況等の予測に基づくものとならざるを得ない
・ベンチャー企業の創業当初の財務状況が芳しくないということのみから,直ちに,投資を回避すべきとは言い難い
・財務監査を実施し,回答内容を疑うべき事情は見当たらず,これを前提に売上げの獲得予測が不合理であるとはいえない
・市況等に照らして成長への期待が合理的である
・所管部署で検討した上で取締役会における審議といった手続が履践された
・役員らが自己等の利益を図った事情がない
・「企業経営者が各種会合等で知己を得,その人脈等を企業経営に活用すること自体は不当ではないし,そのような交流の中で信頼関係を醸造した結果,そのような信頼関係をも起訴として取引や資金提供等に至ることも十分に考えられるところである」
などとして善管注意義務違反を否定。

②シナジー効果を享受することを主たる目的とする投資の事案
・シナジー効果の見込みが不合理とは認められない
・財務上のリスク要因は存在していたが,連結・単体で純利益を計上していた
・取得価格の妥当性に係る意見書の取得,財務監査を依頼して調査報告書を受領,これら資料による所管部署による検討,取締役会での審議を経た
・「株式会社の事業活動の一環として株式投資を行う場合,その目的を達し,企図した経営上の効果を上げるためには,時期を逸さずにその投資の可否・適否を判断する必要があるところ,その判断をするための情報収集に費やすことのできる時間や収集し得る情報には自ずから限界があるし,そのための費用対効果の面も考慮する必要がある」
・経営破綻の危険性のある時期の投資についても,財務状況の調査,監査法人への意見徴収,取締役会決議事項ではないのに上程したことなど,慎重な手続を履践した
などとして善管注意義務違反を否定。